本研究の目的は、割山制度をめぐる自然資源の伝統的管理システムと資源の利用体系を明らかにし、地域社会における持続的な資源利用モデルを提示することである。そこで、本年度は研究の目的を遂行するため、下記の調査研究を実施した。 近年、当該地域では里山整備事業として、利用せずに荒廃した森林を皆伐し、森林を再生させる活動を実施している。その様子を参与観察するとともに、映像記録と聞き取り調査を行った。これとあわせて旧来の伐採方法や燃料材の束ね方、搬出方法、カジコ炭と呼ばれる炭焼きなども再現していただき、記録および調査を実施した。 また、干溝区有文書の議事録の記載事項を整理し、割山という新たな資源管理システムが制度化されるプロセスを確認した。その結果、区長・重立・小前総代・山割委員・萱場組長などの社会的地位や役職をもつ人物が関与しながら、集談・区民総会・臨時総会などの度重なる集会を開催して合意形成を図っていったことがわかった。しかし、決して合意事項が円滑に承認されていったわけではなく、割山の対象資源に山竹や山菜を含めるか、また分家にも同等の割当人資格を与えるかといった問題で対立する意見も生じていた事実が浮き彫りとなった。 地域社会において新たな資源管理システムが社会的に承認されていった状況を把握できた意義は大きい。規約に定められた事項が現実には実施されなかったことも聞き取り調査で確認しており、規則に定められた事項と現実との乖離した状況のもとで、制度を現実社会および環境に適応させていった意味を今後検討する必要がある。
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