本年度の研究内容は、主に次の3点である。 (1)関連文献の収集・読解 本課題に関係する論文・図書を収集した。そして、特に本年度の主要課題である「裁判の目的」に関する資料を優先して読解を進めた。 (2)ヒアリング調査 8月初頭に訪中し、まず8月3日、北京市にて陳衛東教授(中国人民大学法学院、刑事訴訟法)と面談し、刑事裁判の実態、特に近年の死刑手続改革後の状況について、また同月6日、浙江省紹興市にて盧建平教授(北京師範大学刑事法律科学院)と面談し、死刑をめぐる改革および厳打に対する評価についてヒアリングした。 (3)成果発表・報告 坂口一成『現代中国刑事裁判論-裁判をめぐる政治と法』(北海道大学出版会、2009年)を公刊した。同書は報告者の博士論文、その後に発表した論文に加筆・修正を加えたものであり、その際には本課題の遂行を通じて得た知見をも取り込んだ。 また、2009年12月11日に中国・華東理工大学(上海)で開催された「転型中国法律与社会国際学術研討会」(「モデルチェンジ中の中国の法律と社会に関する国際学術シンポジウム」。同法社会学研究センター主催)にて、これまでの成果を整理した「論刑事審判的目的以及其合法性在中国-其合法化之邏輯結構的中日比較」(「中国における刑事裁判の目的およびその正統性-その正統化の論理構造の日中比較」)を報告した。
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