本年度の研究内容は、主に次の2点である。 (1)関連文献の収集・読解 本課題に関係する論文・図書を収集した。そして、特に本年度の主要課題である「裁判統制制度の制度理念・利用目的の析出」に関する資料を優先して読解を進めた。 (1)法的制度である裁判委員会による決定については判決に記述があるはずと考え、主に公式・準公式の裁判例集を対象とした。それへの付議が内部規定で義務づけられている死刑事件に着目したが、その旨の記述は90年代以降逓減している。その理由は次年度の検討課題である。 (2)人民代表大会による裁判の「監督」については、蔡定剣主編『監督与司法公正-研究与案例報告』(法律出版社、2005年)を対象とした。 (3)党委員会・裁判所長等による審査については一般に判決文は出てこないため、主に報道、学術書・論文を対象とした。特に2005年を皮切りに大々的に報道された一連のえん罪事件において、党政法委員会の関与も明るみに出たことに注目した。それらの詳細なフォローは次年度の課題である。 (2)成果発表報告 北京師範大学刑事法律科学院第28期京師刑事法専題論壇(2010年12月28日)にて、「日本学者眼中的中国死刑改革:論有関死刑改革的両個問題」(「日本の学者から見る中国の死刑改革:死刑改革をめぐる2つの問題について」)と題し、「民意」が厳罰を求めていると認識されている今日の中国における、司法レベルの死刑抑制の動きの背景と司法の正統性について報告し、成果の研磨を図った。
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