• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

現代中国の司法の正統性に関する実証研究―刑事裁判の目的と裁判制度正統化の論理構造

研究課題

研究課題/領域番号 21730001
研究機関兵庫教育大学

研究代表者

坂口 一成  兵庫教育大学, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (10507156)

キーワード中国法 / 比較法 / 刑事裁判論 / 裁判の正統性
研究概要

最終年度に当たる本年度は、計画書の計画どおり、「刑事裁判(以下、裁判)正統化の論理構造の解明」に焦点を合わせて考察を進めた。特に共産党(政法委員会)の「指導」の結果生じたえん罪という「不公正」を契機とする、裁判の独立性ないしは裁判に対する「党の指導」のあり方をめぐる当局の言説および学界の議論を重点的に考察した。その上でこれまでの知見をまとめ、アジア法学会および東アジア法哲学会(於台湾)で報告した。その主な内容は以下のとおりである。
すなわち、当局は裁判に公正さが必要であることは認めているが、なお「党の指導」の不可欠性を主張する。日本では公正のためには裁判官の独立が、また中国の有力説においても同様に裁判(官)の独立の徹底が不可欠と考えられているが、当局はそうした考え方には与せず、上位者の「監督」によって「公正」を担保しようとしていると考える。そしてそこには、こうすることが現在の「党の指導」のあり方と、さらには「統治秩序の維持・形成」という裁判の最も重要な目的と適合的であるという判断があるからと考えられる。つまり、中国の裁判が「統治秩序の維持・形成」という目的を最も重要なものとして担うが故に、裁判は統治者たる「党の指導」を受けることにより正統なものと観念され、最重要目的ではない「公正」は、以上の枠組みに適合するように、「独立」ではなく「監督」によって担保されるべきとされることになると考える。
以上のように、なぜ中国において「党の指導」を受ける裁判制度の正統性が主張されうるのか、またそこで日本では裁判の本質的要請と考えられている「公正」がどのように位置づけられているのかが明らかになった。彼我の「裁判」は質的に異なる営為であり、中国の裁判にとって「独立」は本質的要請ではないと考えられることになる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 台湾における罪刑法定主義の理念と現実-その「感覚」をめぐる日本、そして中国との比較2011

    • 著者名/発表者名
      坂口一成
    • 雑誌名

      北大法学論集

      巻: 62巻4号 ページ: 251-298

    • 査読あり
  • [学会発表] 中國的冤案與刑事審判之正統性-揺擺於「黨的領導」與「審判獨立」間的公正2012

    • 著者名/発表者名
      坂口一成
    • 学会等名
      東アジア法哲学シンポジウム
    • 発表場所
      国立政治大学(中華民国)
    • 年月日
      2012-03-18
  • [学会発表] 中国における刑事裁判の正統性と「公正」-「党の指導」により生じたえん罪を切り口に2011

    • 著者名/発表者名
      坂口一成
    • 学会等名
      アジア法学会
    • 発表場所
      日本大学
    • 年月日
      2011-11-19

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi