本研究は、帝政期ドイツ(1890~1818年)の夫婦財産法を法制・法理論・法実務・社会的現実など多様な側面から実証的に解明することにより、ドイツ夫婦財産法さらにはドイツ民法典家族法全体の再評価を試み、ひいては現代日本家族法制への寄与を目論むものである。平成21年度の研究実績としては、研究実施計画に即して(1) 帝政期ドイツの「婦人問題」全体における夫婦財産法の社会的位置を解明するため、エミリー・ケンピン編『女性の権利』誌が取り上げた諸問題の分析に着手したこと、(2) 当時の夫婦財産法に関する通俗的理解に接近するため、同じくケンピンによる手引書『既婚ドイツ女性のための法律案内』の分析に着手したこと、(3) アルトゥール・ヌスバウムの法事実研究の分析を通じて帝政期ドイツの法学界における法現実認識の状況を解明したこと、(4) ヌスバウムも注目した夫婦財産登記簿の統計的分析に着手したこと、(5) 関連業績として16~18世紀ドイツの学位論文における夫婦財産法分野の統計的分析を行ったこと、が挙げられる。このうち(3) に関しては邦語論文を共編著『法の流通』に、欧語論文を欧文紀要にそれぞれ発表し、(5) に関しては戦争法分野の統計的分析を分担した周圓との共著論文をセンター年報に発表した。また(4)に関してはドイツ語を母国語とする研究補助者を活用して行ったマンハイム市登記簿のデータベース化や、自らノルトライン・ヴェストファーレン州立文書館で行ったヴッパータール市登記簿のデータベース化によって、統計的分析の準備作業を大きく前進させた。
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