研究課題/領域番号 |
21730005
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
屋敷 二郎 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30293145)
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キーワード | 夫婦財産法 / ドイツ民法典 / 法事実研究 / 統計的分析 / エミリー・ケンピン / アルトゥール・ヌスバウム / 家族法 |
研究概要 |
本研究は、帝政期ドイツ(1890~1818年)の夫婦財産法を法制・法理論・法実務・社会的現実など多様な側面から実証的に解明することにより、ドイツ夫婦財産法さらにはドイツ民法典家族法全体の再評価を試み、ひいては現代日本家族法制への寄与を目論むものである。 平成23年度は、研究実施計画に即して法事実的側面に関する研究成果の法理論的側面へのフィードバックに着手した。具体的な研究実績としては、(1)帝政期ドイツの「婦人問題」全体における夫婦財産法の社会的位置を解明するために検討を進めてきたエミリー・ケンピン編『女性の権利』の分析に一応の区切りをつけたこと、(2)当時の夫婦財産法に関する通俗的理解に接近するため、同じくケンピンが執筆した手引書『既婚ドイツ女性のための法律案内』を主軸に同時代の通俗法律文献について比較検討を進めたこと、(3)アルトゥール・ヌスバウムの法事実研究を分析した際に得られた知見を生かして法事実的側面に関する研究をさらに充実させ、DNotvなど同時代の主要公証人雑誌の記事に現れた帝政期ドイツ夫婦財産法像の分析を進めたこと、(4)夫婦財産登記簿のデータをより精密に活用するために、マンハイム市統計月報との突き合わせを進めたこと、が挙げられる。また5月にはウィーンで開催されたオーストリア民法典200周年記念式典およびシンポジウムに参加し、各国の研究者と意見交換を行った。他方で、これらの研究実績を具体的な研究成果として日本語・外国語の論文にまとめる作業は、最終年度に持ち越すこととなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の前半はもっぱら外的要因から研究計画全体の進行に重大な遅れが生じたが、研究面に関しては後半にほぼ遅れを取り戻した。また成果発表面では、個別論文の作成にはいくらか遅れがあるものの、論文集の編集はすでに出版社への原稿引渡可能な段階に達した。以上のことから、当初に計画に照らして概ね順調に研究目的を達成したものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度までに残された諸課題に取り組みつつ、これまでに得られた個別的成果を総合して帝政期ドイツ夫婦財産法の実像に迫るべく、本研究の成果を集大成する。その際は、日本語で研究成果をまとめた成果報告書を作成するとともに、国際学会等で口頭発表を行い、研究成果の海外発信に務める。
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