平成22年度は、7月21日までイギリスのケンブリッジ大学クレア・カレッジに滞在し、法学ディプロマ課程(1年間のリサーチコース)に入り、ニール・アンドリュース教授の指導のもと、民事訴訟法を中心とした研究を行った。 イギリスでの中心の研究テーマは、前年度に引き続き、英米における民事訴訟法改革のあり方とした。アメリカとイギリスにおける事件管理、クラス・アクション、証拠開示、サマリー・ジャッジメントを取り上げ、20世紀後半の法改革の流れを追った。英米ともにエクイティー由来の手続が大きく拡張・発展を遂げるなか、アメリカでは幅広い司法へのアクセスが強調される一方、イギリスでは国際的な商事関係事件における迅速かつ機動的な手続的対応に主眼が置かれるなど、興味深い対照性が浮かび上がってきた。この研究は、ケンブリッジ大学にディプロマ論文として提出し、論文審査を経てディプロマの学位が授与されている。 7月21日に帰国した後は、日本に研究の場を移し、イギリスでの研究成果の日本への還元するための研究を続けている。学位論文を日本で公表するため、あらたに裁判管轄や公判・上訴などの裁判過程についても新たに研究を広げつつ、より概括的な比較法的分析を行っている。来年度ないし再来年度に公表してゆきたい。 イギリス滞在中から研究報告の機会にも恵まれた。前年度までの研究の成果である債務者資産凍結差止命令の英米比較について、イギリスの査読つき民事訴訟研究雑誌に論文を掲載することができた。現在これを日本の論者に向けて再構成した論文を日本の法律雑誌、立教法学に掲載する準備を進めている。 また、ケンブリッジ大学のクレア・カレッジで開かれたシンポジウムでも、在英研究の一部であるクラス・アクションについての口頭報告を行うことができた。これも来年度に英文の法律雑誌で公表できる見込みである。
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