研究初年度である今年度は、(1)新規研究フィールドの開拓、(2)昨年度から開始していた沖縄・波照間島の調査結果のまとめ、(3)民法学や法理論の研究動向のサーベイに努めた。6月と2月にフランスに出張し、ヨーロッパ都市再生ネットワーク(URBACT)と研究協力関係を築き、ヨーロッパの縮小都市における空き屋問題についての今後の調査基盤を確立した他、リヨンのPente de la Croix Russe地区において調査を行い、空き屋問題政策、とりわけ収用手続、修復型住宅再生事業、社会住宅供給公社による空き屋住宅の買取-再生についての知見を得た。 日本においては、まず京都市産寧坂伝建地区における二寧坂地区で参与観察を行い、不動産移転時を対象にした営業マナーや景観デザインについての地域ルールであるまちづくり宣言の制定過程に関わった。次に京都府伊根町を訪問し、空き屋問題の現状を把握し、来年度以降の住民アンケート調査、オーラルヒストリーインタビュー調査の可能性を探った。 これまでの波照間島の調査結果を第一住宅建設協会から報告書という形で発行し、その後、9月での波照間島住民アンケート調査結果を加味しながら、不動産契約法理論の試論を論文として刊行した。 この論文執筆過程の中で、一対一モデルで社会を捉える伝統的法律学に対して三者関係で社会を捉えるジンメル社会学の再読を通じて新たな法の社会理論の可能性が拓けるという視点を得ることができ、民法学の契約法理論を再検討する視座を有した。 次年度もこれらの調査を継続し、法理論の構築を目指して行く。
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