2010年度は、まちなみ保存地区における空き家問題の具体的事例研究として、京都府・伊根町の伊根浦伝建地区で重点的な調査を行った。漁業従事者へのライフヒストリー調査をゼミ生の助けも得ながら、組織的に行い、高齢化が著しい高梨部落で住民アンケートを実施し、空き屋活用の意向調査を行った。 また奈良県・今井町においても引き続き、調査を行い、2010年度は、現地のNPOが立ち上げた請人制度研究会のメンバーともなり、信託という法制度を通じた空き家の地元NPOによる管理・再生・借家事業の可能性について検討を重ねた。次年度は、ここでかなり実践的な事業展開の参与観察ができるであろう。 研究発表としては、ヨーロッパの都市再生の動向をまとめた『地域共創と政策科学』を学部スタッフとの共著で刊行した他、日本法社会学会で「コモンズ論の射程拡大と法社会学の役割」というミニシンポジウムを開催し、この成果を学会誌にまとめた。 空き家管理をコモンズ論の視点で位置づけるという理論研究がこれを通じて進んだ。さらに屋外広告物を素材にしたものであるが、京都・産寧坂の伝建地区でのまちづくりにおける自主ルール形成についても論文をまとめることができ、まちなみ保存地区における法の観察方法についての考察を深めることができた。 都市部の中古マンションについても滋賀県草津市でアンケート調査を実施した。ただし、この調査実施に際しては、この科研費を用いていない。 フランスの団地再生についても研究成果をコミュニティ政策学会で発表した。
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