本年度は、最終年度であり、平成21年度、22年度の両年に収集した資料を引き続き分析した。 資料の分析の結果、近年においては、預入売買における問題は減少しており、動産の担保化が現在の主要な問題であることが明らかとなった。動産担保ついて代表的なものは質権で有り、その問題の主要のもの一つは、預金債権の質権設定の可能性の可否であり、この点については、すでに昨年度の実績でも述べたとおり最高裁判例が分かれていることである。この点に関連して、この問題の根本には、民商法典において預金債権を目的物とする権利質の方法が定められてないからであるが、学説として債権譲渡の要式を利用した預金債権の質権設定が提唱されている。この説に関する資料を追加的に収集するために現地調査を行ったが、現地においては主張者以外にはこの方法について議論をする者はおらず、インタビューを実施した研究者、実務家から賛同の意見は聞かれず、現時点では特殊な説であることが明らかとなった。 質権の問題としてのもう一つの問題として、質物の占有移転の問題があり、その問題を解決するために、解釈として動産譲渡抵当が可能か否かの議論があり、その点についても追加現地調査においてさらなる資料収集を行った。しかしながら、現時点では判例による動産譲渡抵当の創設は困難であろうとの見解を得ることができた。 タイの蹴る質権の問題を解決するためには、特別法の立法が必須であることが、インタビュー等の情報収集から再度確認することができた。
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