本年度は翌年度以降の本格調査のための初期調査を行った。 1 調査地域の選定と初期調査のためタイ国チェンマイ県S郡へと移動し、郡庁舎と3村を回り初期調査を行った。この3村は住居者のうちモン族の比率が高いだけではなく、頻繁に都市部への移動が行われることからタイ法からの影響をもっとも受けやすい人々である。基礎データを多く入手し、その影響について調べた。また調査の段階でタイ国内から亡命したグループの固有法の変化を調べるため、亡命したモン族の移住者が多く住むアメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリスにてHmong Societyの協力を得て初期調査を行った。その結果S郡周辺のモン族の収入が周辺のカレン族に比して年収ベースで10倍以上もの格差があることがわかった。またラオスからタイ北部に留まらず、アメリカ・フランスにも続くモンのネットワークの存在がわかった。 2 先行研究調査のためチュラロンコン大学社会調査研究所及びチェンマイ大学社会科学部、ミネソタ州立大学にて文献調査を行った。特に英語文献の整理を行いモン族の固有法についての先行研究をまとめた 3 上述した初期調査を随時研究会・学会にて報告した。7月の基礎調査を元に「タイ山地民における貧困のメカニズム一少数民族間の経済格差一」というタイトルで招待講演を行ったほか、9月のアメリカ調査を元に「アメリカにおけるモン族の婚姻戦略の変化」、今年度の文献調査を元に「法化現象からみたリスク認識:山地民族と住民運動を例にして」というタイトルで報告した。またモン族の法化現象と関連する事例として国内事例としての「地方における公共空間の再構築とコンビニエンスストア」のタイトルで報告した。これらの調査報告を基盤として翌年度以降は民俗学博物館との共同研究を進める予定である。
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