研究計画最終年度である2011年度は、2009年度、2010年度に収集・整理・解読した資料・データを用いながら、研究成果の発信・公表の準備を進めた。同時に、2009年度、2010年度の資料・データの収集の作業において、不足している部分、新たに必要とされることが明らかになった部分については、収集の作業を継続した。 資料・データの収集の継続については、2009年9月に中国(湖南省長沙市、北京市)を、2012年2月に台湾(台北市)をそれぞれ訪問し、大学図書館、国家図書館において資料およびデータ(図書、雑誌、新聞、法律法規、案例、電磁的記録等)を収集し、現地の憲法・人権法研究者と意見交換を行った。研究成果の発信・公表については、「中国の司法制度とその現状」、「言論の自由をめぐる攻防-「08憲章」と「中国的人権観」-」、「民主政と違憲審査制-台湾の司法院大法官会議の事例を検討しつつ-」、「安全、安心与人権-日本的情況-(邦題:安全・安心と人権-日本の状況-)」、「岐路に立つ憲政主張」等、積極的に学会・研究会発表(講演)を行い、質疑応答-討論を通じて私自身も有益な知見を得た。現在、それら学会・研究会報告をふまえて、複数の論稿を執筆中である。 現在の中国の政治環境において、言論の自由をはじめとする政治的権利・自由の保障をめぐる問題はきわめて「敏感」な問題であり続けている。そうした中で、憲法学者や弁護士等知識人が様々な法解釈・法実践(法運動)を通じて、政治的権利・自由の保障の拡大を目指し、それら法解釈・法実践(法運動)が中国政府の政策にもわずかずつではあるが影響を与えているということ、他方で、憲法学者や弁護士等知識人の内部において、そもそも現行の憲法体制をどのように評価するかについて意見の分岐がみられること等が、2011年度の研究を通じて明らかになった。
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