研究概要 |
本研究の目的は大別して二つある。一つは憲法判断という作用の性質につき憲法秩序維持機能を理論的に解明すること(目的A)であり,もう一つは目的Aにより得られた結論を前提に,憲法訴訟論の再構築を試みること(目的B)である。 本年度は,以下の事柄に力を傾注した。目的Aに関して,(1)アメリカへ渡航して各種資料を収集した。具体的には,The Library of Congress(ワシントンD.C.)において,ブレナン,ブラックといった連邦最高裁判事の手書きメモを閲覧し,また(2)積極的に研究会に参加して,多くの先生方からお教えを多々いただいた。また目的Bに関しては,(3)東京大空襲訴訟弁護団から依頼があり,意見書を執筆したことが挙げられる。これは本研究においても,理論の実践という意味で,大変有意義であった。 上記研究活動の成果として,(1)については,「三段階審査・審査の規準・審査基準論」という論文を公刊した。目下注目を集めているドイツ流の憲法訴訟論と,これまで一般的に憲法訴訟論の多くが比較対象としてきたアメリカの憲法訴訟論,そしてわが国の憲法訴訟論の理論的位置づけを検討したものである。本論文により,本研究が目的としている憲法訴訟の客観的性格につき,少なくともその一端が示せたものと考える。 なお(3)については,平成23年度に加筆の上で公刊することを予定している。
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