平成21年度中に、まず、論文「イギリスの司法査と一九九八年人権法」の連載を終えることができ、また、論文「都市計画決定の裁量と訴訟-イギリス法を素材として-」を公表することができた。前者は、イギリスの判例を素材として、1998年人権法の施行に伴ってイギリスの司法審査の実体的側面(具体的には、審査基準および審査密度)に生じた変化を跡付けたものであり、後者は、イギリスの学説および判例を素材として、市計画決定の測量と訴訟のかこし、わが国において都市計画訴訟を法制化するときに留意すべき点を指摘したものである。さらに、これまでのイギリス法研究を通して得た知見をも活用してわが国の行政裁量論に検討を加えた「行政裁量論に関する覚書」も公表することができた。このように、イギリス法研究、ないし、国とイギリスとの比較法研究については、平成21年度中に、かなりの成果をあげることができた。なお、論文「個人タクシー事件」はわが国の行政裁量論を検計するにあたって重要な素材となる判例に考察を加えたのである。 他方で、オーストラリア法研究については、平成21年度中に、オーストラリアでの聞き取り調査を計画していたが、時的な制約のため、実施することがでまず、また、そのせいもあって、行政上訴審判所に関する論文は刊行に至っていない。早期の論文の完成を急ぎたい。
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