本研究の目的は、「公会計改革」をめぐる議論や法状況を考察することにより、「政策選択手続」の全貌を提示することにある。 研究1年目の本年度は、公会計をめぐる諸制度に関して、公法学の理論面における分析を行った。すなわち現在の日本の会計制度や予算制度がいかなる経緯を経て作り出されてきたのか、どのような背景の下に制度設計がなされてきたのかを、文献資料を通じて整理・分析した。他方で、行政の実態を明らかにする実証分析の予備作業も並行して行った。すなわち、近時の公会計改革に関する議論では、予算執行の硬直化や、構造的な赤字体質が問題視されてきた。このような諸問題が、現在の制度のいかなる部分と関係して顕在化しているのかの点についても分析を行った。この作業は主に、平成19年に制定された地方公共団体財政健全化法が、平成21年に完全施行されるに至る中でなされた様々な議論を概観することによって行った。より具体的には、地方公共団体の現場でどのような準備や取り組みがなされつつあるか、何が問題点として指摘されているのか、ということを文献資料に加えて、地方公共団体向けの情報サービスを利用することにより、調査した。 以上の研究を通じて得られた知見は、公会計改革(特に会計学など経済学の分野で論じられることが主である)をめぐる論点を、公法学の分野(特に政策決定をめぐる行政法上の手続等の分野)で深化させる作業の土台となる点で重要なものと考えうる。そこで、1年目の作業で得られた結果を基に、次年度は更に実務面での論点を強化し、本研究の成果を予定どおりに完成させる見通しである。
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