本研究は、国や地方公共団体における広義の財政情報を様々な方法によって広く公開することにより、一般国民・市民が提示された政策を客観的・合理的に選択するための基礎を作り出すことが可能であると考え、その手段としての「政策選択手続」の全貌を提示するためのものである。研究計画2年目(最終年)の本年度は、昨年度に行った理論面での研究を踏まえ、主として実務的側面の調査を行った。 平成18年以降、全国の地方公共団体は連結財務諸表の整備など、いわゆる新公会計制度の導入に着手してきた。近時、小規模町村を除いて、これらの導入がかなりの程度進捗していることが各種の資料から判明した。しかしながら公会計の仕組みは、企業会計のそれとは根幹において異なることから、今後両者が極端に近似化することはないといえる。この点は理論面の分析からも明らかになった。 そこで各地方公共団体では独自に、対市民・対住民の観点からの「わかりやすい」財政情報の示し方について、試行錯誤が繰り返されている。本年度調べたところから特に予算にかかわる主なものを挙げると、予算書における事業別の経費(財源や人件費など、一般住民が知りたいポイント)を明らかにする試み、議会の審議に間に合う形での予算内容の説明、更にはその前段階の予算編成過程の開示などがある。また予算以外でも決算審議の方式や公有財産の状況把握など様々な局面で新たな工夫が行われていることが明らかになった。地方公共団体財政健全化法が施行されたことの副次的(波及的)効果として、財政に関する情報を広く一般に示そうとする意識が、確実に広がりを見せつつあることがわかった。 本年度と昨年度に得られた知見に基づく本研究全体の成果は、研究論文の形でできるだけ早く公表する予定である。
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