平成21年度はまず、立法者の憲法解釈の役割に関する日本の議論状況を把握し、あわせて諸外国のうちアメリカにおける憲法解釈と立法者との関係を積極的にとらえる学説を検証するための作業を行った。 このため平成21年度は、アメリカの「憲法解釈の主体」に関する最新の事情を把握する必要から、外部研究者の知見を請うための研究会を実施した。この研究会では、アメリカにおける大統領の憲法解釈の意義に関する報告(帝京大学の大林啓吾氏)と、憲法の番人としての議会の可能性に関する報告(東北文化学園大学の岡田順太氏)を受けた。これらは両者とも、議会の憲法解釈を考える上で重要な理論的、実際的問題を提供するものとなった。またこの研究会では、私自身、「議会と議員の憲法解釈」論の意義について報告し、憲法解釈の主体をめぐる日本やアメリカにおける議論を検討し、その意義や限界について論じた。 さらに、平成22年度に政治主導の憲法解釈について学会報告する予定があったことから、平成21年度より議会や内閣といった政治部門の憲法解釈に関する日本での実例について、アメリカの状況なども踏まえ、検討を始めた。 以上の研究を通じて、裁判所とは異なる政治部門の憲法解釈の特徴や他権力との関係性などを見て取ることができた。なおこうした研究を通じて得た知見は、順次、論文を通じて公表したいと考えている。
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