1.本研究課題に関して本年度は次のように研究を進めた。本研究の主たる目的は、議会(立法者)を憲法解釈の主体として捉え、憲法解釈に関する諸アクターの役割を検討しつつ、「行為規範としての憲法」の意義を再考することにあった。そこで本年度は、特に近年注目の「政治主導」というキーワードを用いて、政治主導の憲法解釈の意義と限界について検討し、政府構成員を含む議員の「行為規範としての憲法」のあり方を考察した。さらにこうした政治主導の現象は、地域政治でも散見されることから、地域政治の諸アクター(首長や議員)が憲法的規範にどう対応し、解釈するのかについても調査した。 2.以上の研究内容とその検証のため、研究計画でも示したように、国内外の議会制や政治状況に関する文献を調査した(資料調査・収集では、科研費での資料調査出張の他、その他の出張や取り寄せにより入手できた資料もあったので、その分、書籍等を多く購入し研究の環境を整えるなど、研究経費の有効活用ができた)。外国の個別事例を逐一扱うことはできなかったが、以上での調査・研究の内容は、2010年5月に日本選挙学会で報告した学会発表に加え、その内容を加筆・修正して公表した「政権交代と政治主導の憲法解釈」広島法学34巻3号53頁(2011年)以下に反映されている。また、地方政治の諸アクターの役割と憲法的規範との関係について直接・間接的に関連する論稿(首長と議会の二元代表制に関するもの)を書き、雑誌に掲載できた。さらに、立法府の憲法解釈と「行為規範としての憲法」に関連する論稿(立法裁量と法の下の平等)が、2011年4月以降、雑誌に掲載される予定である(掲載決定)。
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