本研究は、代表者がこれまでの研究において分析軸としてきた日本に対する分析のみならず、日本が地域貿易協定(RTA:経済連携協定(EPA)及び自由貿易協定(FTA)を含む)を締結した相手国及び交渉相手国にまで分析軸を拡大する。そのため、平成22年度は、まず対象とする上評3つの問題点に関するデータの収集及び整理を行うことに重点を置いて研究を遂行した。データ整理等のために研究協力者の支援を受けつつ、研究代表者である申請者が単独で遂行した。 経済連携協定が発効した後に解釈運用に関して生起した具体的な問題点や動向を把握するため、既に発効した地域貿易協定の運用・国内実施状況を追跡するとともに、関連する政府機関等(外務省、経済産業省、JETRO)においてインタビューを行った。実施及び改正に関して問題が提起されているシンガポール、フィリピン、タイそれぞれと日本との間て締結された経済連携協定に関する資料収集を行った。とりわけ、いわゆる環太平洋パートナーシップ(P4/TPP)への米国の加入申請や、フィリピン及びタイにおける地域貿易協定と環境条約との抵触及び地域貿易協定と憲法の優先関係といった問題に注目して分析を進めた。WTOドーハ・ラウンド交渉及び経済連携協定の締結交渉において実質的な進展が少なかったことに伴い、研究の内容及び進度を調整し、初年度はデータ収集と整理に重点を置いた。 本研究の意義は、WTOの他にRTAが複数併存する状況において(1)WTOや他のRTAとの抵触の恐れ、(2)併存する制度維持コストの増大の恐れ、(3)事後の変化への対応の必要性、の3種類の制度的問題に光を当て、それらを包括的に把握した上で経済連携協定の効果的な締結・運用を確保するための方策を検討することにある。経済連携協定の締結数が増加することに伴ってこうした問題が顕在化しやすくなることが予想されることから、早期に対応する必要性が大きい。先行研究が乏しいため、先端的研究としての重要性がある。
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