本年度は、国際法の遵守論の総合的なサーベイを行い、国際法学と国際関係論それぞれの分野における学説を分析し、近年の理論動向をまとめることを目的とした。その際にイタリアのEuropean University InstituteにおけるEU法研究者と、アメリカのHarvard Law Schoolの国際法学者と意見交換を行った。遵守論の最新の動向について、また具体的なケーススタディの在り方等について議論をおこなった。 理論的な分析としては以下の2点を中心に行った。1点目として、ハードローだけではなくソフトローの遵守という観点から、ハードローとソフトローの概念を分析、ソフトローの遵守の要因がどのようなものか、それがハードローと異なるものかどうかについて検討した。この関連で論文を公表し、研究会での報告を行った(経済産業研究所「国際公共政策における非拘束的な規律の履行確保システムの検討」に関する研究会)。 2点目として、国際法の国内での「内面化」を促進する要因としての、法の「正当性」について考察した。WTO法の「正当性」が議論される場として、紛争解決手続以外の機関内のフォーラムに注目し、関連の論文を公表した。 理論的サーベイのまとめとしては、学際的なアプローチを用いた遵守研究の著作3冊(米国の研究者によるもの)について書評論文を執筆中であり、来年度に投稿の予定である。
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