平成21年度は、研究実施計画に従いインドネシア国際家族法の内容を包括的に検討するために、主に以下(1)~(3)のことを行った。(1)ディポネゴロ大学の法学研究者と面談し、インドネシア国際私法・婚姻法におけるイスラム法の適用を巡る諸問題について情報・文献提供を受けた。また、スマラン・ジョグジャカルタにあるイスラム裁判所を訪問し、資料を得ることができた。人的不統一法国であるインドネシアにおいて国際私法上で扱う問題としては、渉外的要素を含む国家間の法の抵触に関する問題と当事者の属する宗教等によって適用される法が異なる国内間の法の抵触に関する問題とが併存しているが、本年度は、前者の問題について前記文献・資料も参照し研究を進め、インドネシア国際家族法における総論的課題について研究成果を公表した(「インドネシア国際私法における総論的課題」『アジア文化研究所研究年報』44号75頁)。インドネシアにおいては独立した国際私法法典が存在しないため、オランダ植民地時代に官報1847年23号によって公布された「立法に関する総則」の第16条乃至第18条の規定が未だ効力を有しインドネシア国際私法の法源となっているが、国民法育成庁(LPHN)によって提案された国際私法草案において、インドネシア独自の抵触法上の問題を解決する法概念を見ることができ、今後の国際私法法典立法化への期待を前掲論文において論じた。(2)出稼ぎインドネシア人と中国人との婚姻関係を巡る諸問題を検討する為に、中国特別行政区のひとつである香港と経済特区であるシンセンで聞き取り調査及び資料収集を行った。(3)東洋大学法学部「インドネシア・イスラム法講座」(平成22年1月19~23日)において、インドネシアにおけるイスラム法上及びアダット法上の婚姻について教義を受け、また、本講座の資料として「インドネシア法・イスラム法用語集」を作成した。以上の研究成果を踏まえ、引き続き次年度の研究を進める。
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