昨年度に引き続き平成22年度もインドネシアを中心とした東南アジア国際家族法における公序概念について研究するために、研究実施計画に従い実地調査を行った。具体的には、ジャカルタにある最高裁判所宗教民事局及び宗教省において聞き取り調査を行い、「混合婚(Perkawinan Campuran)」の問題(異教徒間の婚姻及び国際婚姻をめぐる諸問題)について、情報・資料提供を受けた。また、バンドンのISTIQMAH MOSQUEにあるイスラム教徒間の諸問題(信仰、ワリフ(相続)、DVの問題等)の相談を受ける組織(LKBHUWK)の担当のウラマーに、前記諸問題に関する情報提供を受けた。さらに、ジャカルタ市内の国立図書館に足を運び、日本では入手し難いインドネシア国際私法関連の新旧文献を入手できたことは、貴重な財産である。本年度は、前掲及び昨年度収集した資料等に当たり、インドネシアにおける国際家族法上の各論的課題として、「混合婚」に関する内容を中心に検討し、研究成果を公表した。人的不統一法国であるインドネシアにおいては、渉外的要素はもとより、それがなくとも国内間で法の抵触に関する問題が起り得る。昨年度は、インドネシア国際家族法上の渉外的要素を含む総論的課題を中心に研究を進めたが、本年度は、国内間における法の抵触を含む問題に重点を置き研究を進めた。インドネシア国際私法における公序概念について論じるには、国際私法上の総論的及び各論的課題を踏まえた上で、公序概念に通ずるインドネシアにおける法秩序が何かを知ることが重要であると思われ、本研究を通じて、その萌芽を見出すことができた。インドネシア国際私法における公序概念に関する今後の研究に繋げたい。
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