本研究の目的は、国際人権法における社会権の裁判規範性に関する議論を検討し、かつ国際人権法上の社会権保障のための実施措置(個人通報制度・報告制度)における事例と、各国の判例を検証することにより、社会権の司法判断可能な内容とその審査基準を特定することである。 その目的を達成するために、本年度は以下の研究課題に取り組んだ。 1.社会権規約の報告制度の審査基準の分析 (1)社会権規約委員会のガイドライン(新旧)の分析、及び(2)第3回日本政府報告の分析を行い、(3)及び(2)の成果を、「社会権規約を日本で活かす~社会権規約の報告制度と第3回日本政府報告書~」(週刊社会保障No.2580、42-47頁、2010年5月)にまとめ論文発表した。同様に、日本弁護士連合会国際人権(社会権)規約問題ワーキンググループ合宿(2010年7月30日・31口)において、「社会権規約の報告制度と第3回日本政府報告書:規約第12条の健康権を参考に」というテーマで報告を行った。 2.各国の健康権判例の収集と検討 (1)日本国内における健康権に関連する裁判例の収集・整理、及び(2)諸外国及び国際機関等における健康権に関する裁判例の収集・整理を行った。また、米国ジョージタウン大学と世界保健機関の共同研究による諸外国及び国際機関等におけるHealth and Human Rightsに関する判例のデータベース化の作業に協力した。 3.社会権規約選択議定書に関する文献・資料の検討 社会権規約選択議定書に関する文献・資料の収集・整理を行った
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