本研究の目的は、国際人権法における社会権の裁判規範性に関する議論を検討し、かつ国際人権法上の社会権保障のための実施措置(個人通報制度・報告制度)における事例と、各国の判例を検証することにより、社会権の司法判断可能な内容とその審査基準を特定することである。その目的を達成するために、本年度は以下の研究課題に取り組んだ。 1.社会権規約の報告制度の審査基準の分析 社会権規約委員会のガイドライン(新旧)や国連人権高等弁務官事務所において開発研究されている人権指標の検討を行い、それを基に、「人権の履行の促進と監視のための指標の活用」について国際人権法学会第23回研究大会でインタレストグループ報告を行った。また、上記の研究と社会権規約の第3回日本政府報告書の検討を踏まえ、海外研究協力者であるDr.BrigitTbebesを日本に招聘し、国際人権法セミナー「国際人権法上の健康権の国内実施:入権指標の活用の意義と課題」(2012年2月4日、於大阪大学)を開催し、「報告書"The Right to Health in Japan"で活用する人権指標について」を報告した。 2.各国の健康権判例の収集と検討 日本国内における健康権に関連する裁判例の収集・整理・検討し、国連の健康権に関する特別報告者が主催するGlobal Health and Human Rights Projectに情報提供を行い、世界各国の健康権に関する判例データベース作成に関する共同研究に着手した。 3.社会権規約選択議定書に関する文献・資料の検討 社会権規約選択議定書に関する文献・資料の収集と整理を行い、選択議定書の要点および課題について検討した。
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