本研究は、近い将来に「次世代のネットワーク」(NGN)に代表される新たな物理的ネットワークが普及する時点における、通信・放送の融合法制のあり方を検討することをその目的とする。 平成22年度は、まず、大規模な物理的ネットワークを保有する事業者に対する規制の現状及び将来的展望との関連で、近時の米国で発生した3つの大型通信合併及びそれらに対する連邦当局の規制に対する検討を行い、本報告書の[11.研究発表]に記した1件の雑誌論文として、日本経済法学会年報に公表した。これは、昨年度の研究の延長線上に存在する。これら一連の大型合併及びそれらに際しての連邦当局、特にFCCの判断は、当該事業領域における既存の競争上の枠組みを、「公衆電話交換網」(PSTN)及び音声通話サービスを前提とするものから、各々が独立したネットワークの集合体及びインターネット通信を前提とするものへと、法に授権され得る範囲において可能な限りの修正を試みたものである点に非常な重要性を有し、当該研究は、それを詳細に明らかにした点にその学術的意義を有する。 また、通信・放送の融合法制の構築に際しては、既存の「放送サービス」に類似する「放送類似のメディア・サービス」を含む「情報サービス」に対する規制のあり方が、最大の課題となることが予測きれる。当該問題に関連して、米国最大のケーブル事業者であるComcast Corporationによる差別的なネットワーク運営実務の終了を命じたFCCの命令を取り消したアメリカ合衆国連邦控訴裁判所の判決を中心に、近時の米国での情報サービス規制をめぐる議論に対する検討を行い、同箇所に記した1件の雑誌論文として公表した。当該判決は、一度規制が緩和された情報サービスに対する再規制の困難さを明らかにした点に重要性を有し、当該研究は、それに対する迅速かつ詳細な考察を行った点にその学術的意義を有する。
|