本研究は、近い将来に「次世代のネットワーク」(NGN)に代表される新たな物理的ネットワークが普及する時点における、通信・放送の融合法制のあり方を検討することをその目的とする。 通信・放送の融合法制の構築に際しては、既存の「放送サービス」に類似する「放送類似のメディア・サービス」を含む「情報サービス」に対する規制のあり方が、最大の課題となることが予測される。平成23年度は、まず、当該問題に関連して、米国最大のケーブル事業者であるComcast Corporationによる差別的なネットワーク運営実務の終了を命じたFCCの命令を取り消したアメリカ合衆国連邦控訴裁判所の判決を受けて、2010年12月23日、インターネットの自由及び開放性の維持を目的としてFCCによって公表された所謂「開放されたインターネットの命令」(FCC Open Internet Order 2010)を中心に、近時の米国での情報サービス規制をめぐる議論に対する検討を行い、本報告書の【13.研究発表】に記した2件の雑誌論文として公表した。当該判断は、情報サービスに対する規制のあり方に対するFCCの考えを明らかにした点等に非常な重要性を有し、当該研究は、それに対する迅速かつ詳細な考察を行った点にその学術的意義を有する。 また、通信・放送の融合法制の検討に際しては、移動体無線通信サービスに対する規制のあり方も考察する必要がある。近時では、特にスマートフォン等の普及によるトラフィック/通信量の増大が、当該サービスとの関連で、料金問題を含む幾つかの問題を提起してきた。当該問題に関連して、同箇所に記した1件の学会発表で、司会・総論を担当し、特にネットワークの中立性をめぐる議論と関連する問題を中心に報告を行い、更に、政策担当者、学術の領域における研究者及び主要な通信事業者の担当者を含む参加者と議論等を行った。
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