研究概要 |
本研究は,裁判員裁判を念頭に,法廷における主張立証(アドヴォカシー)の技術と証拠法の関係について理論的考察を加えようとするものである。 平成21年夏から始まった裁判員裁判においては,従来とは異なり,一般市民である裁判員が見聞きしたことをその場で理解し,それ基に心証を形成することができるような主張立証を法廷において展開することが必要になった。本報告書執筆時点では裁判員裁判の開始からすでに半年以上が経過し,裁判員裁判の実例が相当数蓄積されてきている。しかし,従来にない主張立証の方法が証拠法に及ぼす影響を解明するにはなお十分とはいえない。 そこで,本研究では一般市民による裁判の典型例である米国の陪審裁判に素材を求めることにし,平成21年度においては,まず,一般市民の参加する裁判の典型例である米国の陪審裁判を長期間継続して傍聴し,そこで駆使される主張立証の技術をつぶさに観察した。また,法廷における主張立証の技術に関する研究と教育の内容についても現地の研究者から知見の提供を受けた。 次いで,年度の後半においては,上記実地調査から得られた知見を整理し,米国において収集した文献資料を分析するとともに,我が国の裁判員裁判の傍聴も行い,検討の素材の充実を図ることに努めた。3か年計画の研究の初年度であるため成果を学術論文として公にするには至らなかったが,本年度に得た知見を踏まえ,2年目,3年目に研究の結果が形を成すよう努力したい。
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