本研究は、司法制度の大変上革期における少年行刑のあり方とそれをめぐる法的関係の整理・明確化の要請に応えるため、(1)経験的調査(統計分析、ケース研究、アンケート、インタビュー)と(2)ドイツとの比較法研究を通じて、少年行刑制度の運用実態とそれに伴う法的問題を整理し、(3)現行法制度下での法解釈に基づく新たな対応可能性と限界を明らかにするとともに、(4)立法提案を行うことを目的とした。 本年度の計画は、前半は、文献調査と経験的調査を継続することにあった。また、それまでの成果を踏まえながら、再度ドイツと日本の双方において経験的な調査を実施することにあった。 本年度ドイツにおける実地調査を実施することはできなかった。しかし、現地の研究者および実務家とのメールの交換により有益な情報を収集することができた。また日本においても、実務家からのヒアリング調査を行うことができた。 本年度、立法提案をとりまとめることはできなかったが、本研究と密接に関連する、少年院法案・少年鑑別所法案の土台となった「少年矯正を考える有識者会議」におけるヒアリングに昨年度関与した関係から、この検討を進めることとなった。この成果については、来年度に公表したいと考えている。 本年度の活字業績の成果である、後掲「少年に対する裁判員裁判」は、本研究とも密接に関連する裁判員裁判のあり方を論じたものである。「戦前期における附添人論(1)、(2)」ば、日本に関する調査の過程で少年矯正の歴史的分析の重要性を改めて認識したことに基づいた研究の成果である。
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