平成21年度に実施した研究の成果の一部として、後掲の『被害者法令ハンドブック』(共編著)が挙げられる。当該書の担当部分では、各種法令における被害者の概念、被害者関係法令の全体像の中での被害者の法的位置づけ、被害者全般にみる救済と支援の性格を明らかにした。また、一般法体系における被害者関連規定として、とくに民事法と刑事法(共同)の分野について、関連する諸規定を選択・収載するとともに、簡潔な解説を加えた。そして、被害者をめぐる法制度・手続等の流れを図表化するとともに、被害者関連立法・事件対照年表を作成した(共同)。この過程で、告訴に関する規定および親告罪に関連する規定と、それを取り巻く被害者に関連する様々な諸制度および諸規定を、刑事司法の分野に限定せずに広く確認した。本研究課題のうち本年度の研究実施計画にとくに直結する成果として、告訴の受理に関する諸規定と、いわゆる告訴権の濫用に対応する諸規定(刑事実体法および刑事手続法における制裁的規定)などから、法制度・実務の犯罪被害者に対する姿勢を確認することができた。これらを理論体系的に整理した研究成果は、改めて別稿にて公表する予定である。 このほか、平成21年度の研究計画には告訴権・親告罪の歴史的生成・発展過程やドイツの条件付親告罪制度等の検討が含まれているが、この研究成果は、整理・再検討のうえ、平成22年度以降に公表する予定である。
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