平成22年度も、本研究では、昨年度に引き続き、(1)わが国における問題行動の見られる少年・児童に対する処遇・支援の重要性とその方法の明確化(かかる少年・児童に対する処遇・支援を少年非行対策として導入する上での必要性の部分)および(2)処遇・支援の法的限界の明確化(同妥当性の部分)を目指した。 その研究実施方法として、昨年度同様、(1)必要性の検討については、国内外の文献および処遇・支援の実態調査(アメリカ合衆国のカリフォルニア州(サンフランシスコ郡・ロサンゼルス郡)および関東地区の神奈川県)を通じてデータを収集した上で、かかるデータの分析、検討を図った。また、(2)妥当性の検討についても、国内外の文献を通じて検討課題を収集した上で、かかる検討課題を考察した。 本年度は、問題行動の見られる少年・児童に対して多様な行政機関の適正かつ有効な連携(情報連携及び行動連携)による処遇・支援が行われるに際して、どのような方法が取られるべきか明確化を試みた。この点、少年・児童の発達におけるできる限り早期の段階で、非行行動への親和性が高まる素質的・環境的リスク因子(家族関係上の特質、精神疾患等)に対して「予防」的な関わりを持つことの重要性を指摘できる。ただ、そうした「予防」的な関わりでは、本人や親の意思(自己決定)が尊重されるので、あくまでも「サポート」として実施されることになろう。少年・児童の問題行動が重大性を帯びるに従い、比例して一層強力な処遇・支援が実施されることになるが、その際には、強制力の行使に対するチェック機能を果たす上で、司法機関が重要な役割を果たすことになる。司法機関を中心とした「問題解決型裁判所」のような多機関連携の制度においても、司法機関がチェック機能を果たしながら運用されていくべきであろう。最終年度においては、補充的なデータ収集も実施しつつ、研究課題を総括していく。
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