本研究の目的は、これまでの民法541条が規定する催告解除がその他の解除原因に基づく解除と同じ効果を有し、しかも不履行に基づく解除の一般原則として考えられてきたことにかんがみて、催告解除が如何なる機能を有しているかを再検討し、それによって催告解除が解除法の中において如何なる意味を持っているのかを探求することにある。 平成22年度は、大きくわけると二つの研究を行った。第一に、わが民法541条がその模範とした債務法改正前ドイツ民法典、および改正ドイツ民法典における催告解除の機能および契約の清算の問題を研究した。その結果、次の結論を得た(「北海学園大学法学研究」掲載論文)。催告解除は、不履行に基づく解除の一般原則としてではなく、給付がなされない場合にだけ認められ、その主たる機能は、債権者を債務者のなされない給付を待つことから解放することにある。債権者がすでに反対給付を行っていた場合に、催告解除によって給付の返還を求めることができるのは、債権者が契約から解放されることによる効果にすぎない。これに対して、催告解除によって債務者がした給付の受戻しは認められない。この場合における契約全体の清算は、重大な契約違反がある場合に認められる。 平成22年度は、以上の研究と平行して、英米法について検討を行った。その結果、ドイツ法とは異なるものの、英米法においても設定期間の徒過による解除制度が存在すること、また、それは、一般化できないものの、それが認められる場面においては、ドイツ法における催告解除と同様の機能を果たしていることが分かった。
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