研究課題
本研究の目的は、催告解除あるいはそれと類似する制度を有する法制度における催告解除の機能を分析することによって、催告解除が如何なる機能を有するかを明らかにすることにある。すでにわが国も催告解除の母法たるドイツ法の分析から、第一に、催告解除は、債権者を債務者の給付を待つことから解放する効果しか有さないこと、第二に、債務者が何らかの給付を行った場合、たとえば、一部給付や不完全履行を行った場合には、催告解除によっては、債権者は、その給付を受け戻すことはできないこと、第三に、給付の受戻しは、給付への利益が消滅した場合(重大な不履行)において認められること、第四に、近時債権法改正における議論に見られるように、催告解除は、重大な不履行の一類型ではなく、むしろ、催告解除は、その成立過程から言えば、利益消滅(重大な不履行)に基づく解除とは異なるものであることがわかった。そして、平成21年度からの3年の研究によって、催告解除制度またはそれと類似する制度を有する他の法制度(ドイツ法系、英米法、CISGなど)においても、右に述べた催告解除の機能は、ほぼ共通するものであることがわかった。また、これまでの研究から、わが国では、解除は、実質的には損害賠償の一態様として機能していることもわかった。それにもかかわらず、解除に基づく契約の清算と損害賠償による契約の清算との関係は、十分に検討されていないように思われる。そこで、この問題については、将来的な研究課題として、今後検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成21年度からの研究内容については、それ以前にある程度の準備ができていたこと、また、各国宝の状況については、CISGなどの解説書において説明されていること、また、近時わが国においても、CISG関連の論文が公表されたため、研究に関連する資料や情報が入手しやすかったことによる。
これまでの研究から、民法541条における催告解除は、不履行事案において契約の清算制度としては十分に機能しないことがわかった。そこで、今後は、契約の清算という観点に着目し、契約全体の清算が如何なる場合に認められるかを検討する予定である。また,この検討においては,解除だけでなく,損害賠償による清算も視野に入れて検討を進める予定である。
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法学志林
巻: 109 ページ: 89-111
民法学における古典と革新
ページ: 167-185