本研究の目的は、催告解除あるいはそれと類似する制度を有する法制度における催告解除の機能を分析することによって、催告解除が如何なる機能を有するかを明らかにするものである。 これまでの催告解除あるいはそれに類似する制度を有する諸外国あるいは国際取引に関する法制度の比較法的検討および解除法あるいは催告解除の発展史の研究から、催告解除は、利益消滅にもとづく解除の不都合、すなわち、利益消滅の判断をするために裁判を要し、そのため解除に時間を要することや、利益消滅の立証において、営業秘密が漏えいすることの不都合から、簡易で比較的明確な手続きによって、早急に債権者を契約関係から解放するために認められた解除手段であることがわかった。それゆえ、催告解除について重大な不履行を抗弁として主張しうるような債権法の改正案にみられる解除案は、催告解除に評価を要する要件を持ち込むこととなるため、右に指摘した催告解除の本来的機能を無にするものであり、そのため、改正提案には問題がある。 また、以上のような催告解除の機能から、さらに催告解除は次のような効果を有することもわかった。第一に、催告解除は、債権者を債務者の給付を待つことから解放する効果しか有さないこと、第二に、そのため、債務者が何らかの給付を行った場合、たとえば、一部給付や不完全履行を行った場合には、債権者は、催告解除によって債務者による一部履行や追完を待つことから解放されるにすぎず、催告解除によって、すでになされた給付を受け戻すことはできないこと、第三に、給付の受戻しは、給付への利益が消滅した場合(重大な不履行)において認められること、第四に、債権法改正における議論に見られるように、催告解除は、重大な不履行の一類型ではなく、むしろ、催告解除は、その成立過程から言えば、利益消滅(重大な不履行)に基づく解除とは異なるものであることがわかった。
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