研究概要 |
本研究は,インフォーマルな共同体・ネットワークが商取引において果たす役割を解明し,それを前提とした上での商取引をめぐる法制度設計のあり方を実証的に分析するものである。すなわち,メンバー相互間の取引関係のみならず,その組織ガバナンス,外部者との間の取引関係がどのようなメカニズムに基づいて形成されているかを解明し,なぜ取引当事者が共同体・ネットワークを利用するのかを,理論的な分析のみならず,実証分析をも併用することによって解明することを試みることを目的としている。 本年度は,まず,研究者の実証研究の方法論のアップデートをはかるため,統計的および定性的な実証分析の最先端の手法を学ぶために,リュブリャナ大学(スロヴェニア)に滞在し,ワークショップに参加し,研究手法の習得につとめた。さらに,理論的な分析フレームワークの構築をはかるために,経済学者との「法の経済分析ワークショップ」に参加し,さまざまな理論モデルの探索を行った。また,本研究と類似した問題関心を持つ東京大学のソフトロー・グローバルCOEとも連携することによって.より幅広い分野の研究者と交流し,多様な理論モデルの可能性を探った。 そのような探索の最初の成果が,後掲の研究業績「ソーシャル・レンディング」である。これは,インターネット上の共同体形成を通じたファイナンスを実現しているmaneoに対してインタビューを実施し,その実態について実証的に明らかにした上で,そのような共同体がどのように活用されており,当事者がどのようなインセンティヴを持って取引に参加しているのかについて理論的に解明し,法ルールのあり方について論じたものである。ソーシャル・レンディングの理論的・実証的研究はこれまでになく,これは画期的な業績である。
|