本研究課題は、親権法一般についての基礎理論研究を深化させることを通じて、親子関係の法的な位置づけにつき、民法の家族法及び家族に対する公法的規律との関係という視角から、体系的な考察を行うことを目的としている。 平成25年度においては、第一に、後見制度を国際私法の観点から研究し、後見制度の法的性質につき、成年後見と未成年後見との違い、及び未成年後見について親権制度及び行政上の社会的養護措置との関連を視野に入れつつ、考察を行い、その成果を論究ジュリスト2号誌上に公表するとともに、日本私法学会におけるシンポジウム「国際家族法」で報告した。その中では、子どもの養育を誰がどのように行うかという問題は、財産を有する高齢者の財産管理をいかに行うかという問題とは異なる、国・親・子・家族にかかわる理念的な判断を伴うものであり、各国の法制度の理念に即しつつ、実効的に未成年者の利益を図る必要性を指摘した。 第二に、精神保健福祉法上の保護者制度と民法上の後見制度との関係について、明治時代の立法期以来、一定程度の議論が存したものの、その後に断絶が生じていることを明らかとしたうえで、判断能力が不十分である等の問題を抱える個人の保護における家族と公的措置との関係を見直し、特に、家族による保護を重視する日本の制度の有する問題点を解決する必要性を指摘した。 このように、本研究課題においては、未成年者を保護するための法的制度としての親権法の研究を出発点に、個人の保護における家族構成員間の私的権利義務関係及び公的措置の関係について、課題の提示を行うことができたと考えている。
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