研究課題
平成22年度においては、研究実施計画にしたがって、前年度に引き続き、ドイツ法・フランス法及びその両者間の比較の作業を行うほか、大陸法とは訴訟手続の構造や実体法と手続法との関係を異にするものの、部分的にはフランス法と類似の規律をも有している英米法についての検討を開始した。そのうち、研究成果として挙げるべき点としては、次のものがある。第一に、訴訟上の和解の法的性質論との関係では、裁判上の和解と裁判外の和解とを峻別するドイツ法と、両者を峻別せず、かえって、民法上の和解契約にも訴訟終了効類似の効果を承認し、またその要素として訴権の処分を見出す有力学説が存在するフランス法との比較を通じて、和解の訴訟終了効をどのように位置づけるか、という視点から、従来の日本の議論を検討し直す余地があるとの示唆を得ることができた。第二に、訴訟上の和解の効力論の関係では、現在日本において多数説を占めているとみられる制限的既判力説と有力説たる既判力否定説との対立軸は、和解後に和解当事者の地位を何らかの形で承継した者に対する和解の効力の問題に見出すことができること、この問題は、判決における既判力の口頭弁論終結後の承継人に対する拡張の意義・根拠の債権等を促す面があること、また、和解の「既判力」を論じる際の根本問題として、当事者の意思に基礎をおきつつ、制限的ではなく完全な既判力を認める余地があるかどうか、という問題を再検討する必要があることを、明らかにすることとができた。
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BAUM/BALZ(Hrsg.), Handbuch Japanisches Handels- und Wirtschaftsrecht
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仲裁とADR
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基礎演習民事訴訟法(長谷部由起子=山本弘=笠井正俊編)
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