ドイツやフランスにおける債務法改正作業に示されているように、近年、世界の各国において、契約法の「現代化」が進められている。日本も、このような動向と無縁ではなく、2008年にウィーン売買条約(CISG)の批准がなされたほか、民法(債権法)の全面改正へ向けた検討が、法制審議会民法(債権関係)部会において進められている。 本研究は、このような立法・改正作業に寄与すること、および、新たな契約法の運用の指針を提示することを目的として、契約違反に直面した当事者に与えられる「救済」を決定するプロセスの解明を目指すものである。 本年度(平成21年度)は、主として3つの作業を行なった。 第1に、これまで研究を進めてきた、CISGにおける履行請求権の位置づけについて、概説書の執筆(分担執筆)を行なった。従来、十分に意識されてこなかった日本法との交錯する場面についても、検討を行なった。その成果は、後掲の著書において公表されている。 第2に、「救済」法の中でも特殊な位置づけにある解除について、損害賠償請求権との関係など、若干の検討を行なった。その成果は、後掲の2つの雑誌論文において公表されている。 第3に、前年度に引き続き、本研究の中核を占める、契約の改訂に関する研究を進めた。その成果の一部として、アメリカ法の研究成果を、後掲の雑誌論文(連載中)において公表した。契約の改訂に関する研究は、本年度の後半に大きな進捗があり、その成果を、次年度の前半に公表する予定である。
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