本研究の目的は、未成年者のために円滑に運用される未成年後見制度を再構築することにある。そこで、今年度は、わが国の未成年後見制度のあるべき法改正の方向性を検討することを目的とし、ドイツ未成年後見制度の現状ならびに法改正の動向を中心に研究を行った。 従来、わが国では、未成年後見制度の法改正の必要性が主張されながらも、長らく、実現に至らなかったが、平成22年12月に法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会が示した「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案」の中で、法人後見と複数未成年後見が提案されるに至った。これは、従前から指摘されてきた未成年後見の引受手の確保に対応すべく提案されたものである。 このような我が国の法改正の動向を踏まえ、ドイツ法を検討した結果、次のような成果を得られた。まず第一に、ドイツでは、すでに法人後見や複数後見人制度が認められており、法人の適格性を担保する法制度や複数後見人間の権限行使の規律の仕方について詳細な規定が存在し、今後、わが国が制度を運用していく上で、示唆に富むものとなっていることを明らかに出来た。第二に、ドイツにおいては、わが国には無い官庁後見制度が実務において重要な地位を占めている状況を明らかにしたが、その点からは、わが国においても、とりわけ被虐待児童を対象とする未成年後見の場合には、たとえば、児童相談所を中心とした公的後見の導入が望ましいのではないかとの結論に至った。そして、第三に、2010年、ドイツで提案された「未成年後見法及び世話法改正法草案」の中では、たとえば、未成年後見人に、月に一度、被後見人と個人的なコンタクトをとる義務を課す規定(新BGB1793条1a項)が挙げられており、わが国の今後の未成年後見制度のあり方を検討していく上で、重要な示唆をえることができた。
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