平成21年度は、企業グループを構成する会社の株主を保護するフランス法の制度を調査し、検討を行った。親子会社間の取引に際して子会社少数株主を保護するための特に重要な制度として、取締役・会社間の利益相反取引に関する規整、および、多数決濫用法理を挙げることができる。フランス商法は、取締役・会社間の自己取引に係る規整を、会社の議決権の10%超を保有する株主と会社との取引、および、支配会社と会社との取引にも適用する。これにより、当該取引は、取引に利害関係を有しない取締役による審査を受け、取引に関する情報を記載した会計監査役の報告書が子会社少数株主に開示されなければならないこととなる。この報告書は、株主総会の承認を受けなければならず、承認を欠く取引によって会社に損害が生じた場合には、当該取引に利害関係を有する者および取締役は責任を負う。このため、取引の条件が不公正であると判断した株主は、承認を拒否し、大株主・支配会社、または従属会社取締役に損害を賠償させることが可能となっている。 多数決濫用法理は、会社全体の利益に反し、かつ、少数派構成員を犠牲にして多数派構成員を優遇することを唯一の目的とする決議が可決された場合、当該株主総会決議の無効を裁判所が宣言するというものである。フランスのRozenblum原則は、取締役会または株主総会の承認を受けたグループ政策の存在を条件の一つとして、会社の利益を犠牲にしてグループ利益を追求した取締役を免責する。親会社が子会社株主総会において自己に有利で子会社に不利なグループ政策を決定した場合、多数決の濫用に該当しうるので、このグループ政策に従った子会社取締役の責任が問題となった場合に、少数株主側は、グループ政策を承認する決議が多数決濫用に該当し、無効であることによって、Rozenblum原則による取締役の免責を阻止することが可能となる。
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