フランス法との比較を通じて、わが国の面接交渉権に関する従来の法解釈および1996年に民法改正要綱により示された立法化の方向性を批判的に検討し、面接交渉権に関する法理論を再構築するために、平成21年度は、フランス訪問権に関する法理論および立法過程に関する検討を行った。具体的には主に下記の1、2の視点により検討を行い、次のような成果が得られた。 1. 1970年の訪問権の立法化以前については、訪問権の権利性の問題、権利主体の範囲、法的性質論が議論の検討を中心に行った。得られた研究成果としては、まず、1970年の訪問権の立法は判例および学説を承認するかたちでなされたゆえ、フランスの訪問権は実社会に要請に合致するものであり、訪問権の主体は父母・祖父母・第三者と広いことが明らかとなった。そして、訪問権承認の根拠および法的性質は、それぞれの権利主体によって異なり、とりわけ、親子関係の立証が禁じられた婚外子の親、血縁関係のない「育ての親」、さらに祖父母の訪問権を認める際に子の利益の視点から血縁関係や愛情関係にその根拠を求める自然権説の発展がみられたことがわかっている。 2. 1993年の共同親権制導入後の父母の訪問権に関する学説および判例を検討した。その結果、共同親権導入後は、父母の訪問権は、例外的に単独親権となった場合にのみ機能するものとして変化したことが明らかとなった。 以上の研究成果は、次のような意義および重要性を有すると考える。すなわち、上記の1996年の民法改正要綱以降に家族法改正に関する諸私案が公表されており、また、昨年は複数の学会で家族法改正がテーマとされた。しかし、未だ面接交渉に関しては、議論が進展しておらず、本研究で明らかとなった研究成果は、時宜を得たものであり、共同親権導入の議論とも絡んで、今後の立法の方向性をも示す重要な示唆に富むものであると考える。
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