平成22年度に実施した研究では、フランス法における訪問権に関しては、特に2002年法以降の法改正(直近では2010年の法改正まで)と学説の議論状況、そして近年の裁判例を検討し、訪問権論の近年における変化をみた。わが国の面接交渉権に関しても、近年の法改正の動向や裁判例および学説を検討し、フランスの訪問権論とわが国の面接交渉権論の比較法的考察を試みた。その結果、従来のわが国の面接交渉権論の中で示されることのなかった根源的な法理論を構築することができた。すなわち、面接交渉権は、子、面会者、親という三面関係の中で行使される権利であり、それゆえに、その権利の性質を明確にすることは困難であり、これまでの議論の中では三面関係を考慮した法理論は構築されていなかったが、本研究ではそれを明らかにした。相互の関係を考慮した法理論を明確にすることで、面接交渉権が関係する法領域(たとえば親権法)の中でこの権利を位置づけ、および役割を明確にできると考える。このことは、現在、検討されているハーグ条約の批准および共同親権制の導入の議論の際にも役立つことと思われる。 わが国では、面接交渉権の立法化に向けての動きがここ数年で加速しているが、その動きの中で、本研究は、まず1996年の民法改正要綱にはじまる面接交渉権に関する従来の立法案の問題点を子の利益の視点から指摘し、そのうえで立法の一つの方向性を示すことができたと思う。
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