九州の地方銀行・信用金庫・信用組合などのHP・出版物から各地の資金調達手法につきリサーチを行った。その結果、1、資産の流動化はほとんど行われていないこと、2、各地域では件数・融資額ともにぼらつきはあるものの動産と債権を目的とする譲渡担保が確実に実践されていること、3、金融機関の独自スキームもあるが、名くは信用保証協会と連携した政府主導の融資制度によること、4、目的物(原資)は農業・漁業関連であり、売却を視野に入れて一部には「地域ブランド化」まで念頭に置かれていること、が明らかになった。 地域的には、鹿児島・宮崎・熊本で金融機関による積極的な活用が目立った。特に近年はリレーションシップバンキングが導入されており、債務者や担保目的物に対するモニタリングが意識されている。しかしモニタリングは本来の融資関係においても当然に実践されるべきものである。また、リレーションシップバンキングについては、経済学の分野では多少の調査・論考が見受けられるが、法律の分野ではほとんど意識・注目されていない。 引続き本研究により、地域での融資の今日的実践やモニタリングのコスト負担の実情から法的問題点を明らかにし、関与者のインセンティブも意識した上で、一般理論も対象にした法的な改善提言を行うことが重要であると考える。
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