本研究は、民事訴訟手続において認められる専門職従事者の証言拒絶権(民事訴訟法第197条1項2号)のうち、弁護士が職務上知り得た事実で黙秘すべき事項につき有する証言拒絶権に関して、法曹倫理の観点も含めた考察を行うものである。研究期間は平成21年度よりの3年間である。弁護士の職務上の地位についてはこれまで法曹倫理の一部として実務家の視点から議論されることが多かったが、近年の司法制度改革、法曹人口の拡大が唱えられる中、理論としての体系化、並びに実務と理論を架橋する研究の必要性が高まっている。本年度はまずイギリス法について、他業種共同事務所(MDP)の導入にあたって問題となった、弁護士依頼者間の秘匿特権を他業種の専門職との間でどのように調整するか、についての立法対応を調査し、日本におけるワンストップ・サービスへの応用の可能性を示唆した論文「弁護士の守秘義務と証言拒絶権(三・完)」(首都大学東京法学界雑誌50巻2号227頁)を公表した。その後2010年2月21日より3月3日にかけて米国にて秘匿特権に関する資料収集と聞き取り調査を行っている。聞き取り調査は、(1)American Bar Association Center for Professional Responsibility所属のArthur Garwin氏及びDennis A.Rendleman氏、(2)New York University Law School所属のOscar Chase教授、(3)American Bar Association Attorney-crient privilege task force所属のR.Larson Frisby氏に各1~2時間ほど話を伺っており、とれら米国での調査の結果は、平成22年度中に論文として公表を目指している。
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