本研究は、民事訴訟手続において認められる専門職従事者の証言拒絶権(民事訴訟法第197条項2号)のうち、弁護士が職務上知り得た事実で黙秘すべき事項につき有する証言拒絶権に関して、法曹倫理の観点も含めた考察を行うものである。研究期間は平成21年度より3年間である。弁護士の職務上の地位については、これまで法曹倫理の一部として実務家の視点から議論されることが多かったが、近年の司法制度改革、法曹人口の拡大が唱えられる中、理論としての体系化、並びに実務と理論を架橋する研究の必要性が高まっている。本研究の目指すところは弁護士はどの範囲の秘密に対して守秘義務を負うのか(依頼人の秘密に限るのか、それ以外の秘密にも及ぶのか)、弁護士の守秘義務が訴訟手続においても尊重きれるべきなのは何故かを明らかにし、訴訟上及び訴訟外において保護される秘密の範囲を明確にすることであって、これにより国民が弁護士から法的サービスの提供を受ける際に安心して弁護士に情報の提供をなし得ることになり、その意義は大きいといえる。本年度は昨年度来の方針を継続し、英米法を中心に、EU方も視野に入れながら、比較法的な調査研究を行った。2010年9月17日より10月1日にかけては、米国にて秘匿特権に関する資料収集、及び、New York University Law school所属のOscar Chase教授ほかに聞き取り調査を行っている。これらの調査研究の結果は、本年度中は公表するまでには至らなかったが、平成23年度中に論文として公表を目指している。
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