本研究は、民事訴訟手続において認められる専門職従事者の証言拒絶権(民事訴訟法第197条1項2号)のうち、弁護士が職務上知り得た事実で黙秘すべき事項につき有する証言拒絶権に関して、法曹倫理の観点も含めた考察を行うものである。本研究の過程で発表の論文では、英米法における弁護士依頼煮間の秘匿特権(Atttorney-Alient Privilege)の規律を日本における証言拒絶権の議論にも導入できないか、と提案し、具体的には、弁護士依頼者間で行われたコミュニケーションについては、原則として、証言拒絶の対象となる秘密として取り扱うべきである、という提言を行った。本年度の研究は、比較法研究の重点を、昨年までの英米法からEU法その他諸国の法規制(特に、日本民事訴訟法の母法たるドイツ法)に移し、多面的な根拠に基づいて上記の提言を裏付けることを目指した。特に、2011年7月25日より同月29日にかけては、ドイツ・ハイデルベルクにてlnternational Association of Procedural Law 世界大会に参加し、上記証言拒絶権の問題について諸外国の研究者・実務家と意見を交換する機会を得たほか、あわせて資料収集を行った。その結果、ドイツ法ほかEU法においても、英米法の規律との類似性・共通性を見いだすことができたため、上記提言に対する一定程度の根拠付けが得られた。この成果については論文として発表すべく、現在執筆を続けている。英米法・EU法に共通する規律を日本法にも採り入れることができれば、国際的にみて我が国の民事訴訟手続がより利用しやすいものとなるほか、我が国の弁護士の活動分野の拡大に大きく寄与するものと考えている。
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