平成21年度は、フランスにおいて債権回収手段の1つあるいは補完手段として機能しているとされる虚偽表示確認の訴に関して、平成21年3月から9月末にかけてストラスブール大学企業法センターに客員研究員として派遣された折、関連する文献調査および収集を行った。帰国後、平成21年度末までの間、収集した文献の整理および分析作業に終始し、具体的な業績を公表するには至らなかったが、虚偽表示確認の訴を行使する利点を明らかにすることができた。今年度の作業を前提として、来年度は、虚偽表示確認の訴の実益を検証すべく、とりわけ詐害行為取消権の行使要件および効果との比較を丹念に行い、本訴権を民法94条の解釈によってわが国に導入するための試論を提示する。わが国では、債務者の財産であるはずなのに、その配偶者や子の名義になっているという場合が少なくない。このような場合、さらに、詐害行為取消権を行使しようとしても、債権の発生以前に虚偽仮装名義が作られていた場合、債権者は当該財産に手を出すことができない。しかし、虚偽表示確認の訴を利用すれば、通謀虚偽表示の当事者のうち真正権利者の債権者が、表見所有者に対して権利行使をする場面において責任財産の保全を行いうる余地が出てくるのである。
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