本研究は、仏民1321条をめぐるフランスの議論の中でも、「虚偽表示確認の訴え」が、仏民1321条において保護される第三者のうち、無担保(一般)債権者によって、自己の債権の回収ないし保全手段として利用されている実態を紹介し、詐害行為取消権との対比において、虚偽表示確認の訴えを利用することの利点を明らかにしつつ、わが国への応用可能性-虚偽表示につき利害関係をもつ債権者保護のため、債権回収の方策の1つとして民法94条の解釈論を展開する可能性-について提言することを目的とするものである。 平成22年度は、上記目的を果たすべく、フランスにおける虚偽表示確認の訴えの実際的機能をについて、詐害行為取消権を行使する際の要件および効果と比較しつつ、フランスの学説状況を精査した。しかしながら、この作業の直接の成果を公表するには至らなかった。その代わり、検討過程において得た視座をもとに、我が国における民法94条2項類推適用法理をめぐる議論、判例の変遷につき、判例の判断枠組を再検証する論説を執筆した。さらに、取引において第三者を惑わす「権利の(=権利者たる)外観」は具体的にどのようなものがあるのかについて、比較的新しい下級審判例を素材に検討し、判例研究として公表した。 その他、公表は平成23年度になるが、フランスにおける虚偽表示確認の訴えをめぐる問題の1つとして、民法1321条の第三者の権利主張が競合する場合の優劣の決し方について、決着がついたと評価されている破毀院判決を素材に、判例紹介を著した。
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