本研究は、我が国における建物の区分所有法制のあるべき姿を探るために、諸外国の法制度との比較法的考察を行いその検討から示唆を得ようとするものである。本研究は平成21年度と22年度の2年間において行われる。 平成21年度においては、文献調査および現地調査の双方を行う予定であったが、年度前半は社会状況により外国出張が困難であったこと、年度途中で研究代表者の所属機関の変更があったこと等の事情から、本補助費による研究は基本的にオーストリア法、スイス法の制度概要に関する文献調査およびドイツ法の最新の文献の調査を内容とした。 先ず、ドイツ法およびオーストリア法に関しては、主として日本における文献調査を行うこととし、その成果に基づいて、インスブルック大学法学部のホイブライン教授を訪問し、主として日独の法制度に関する幅広い意見交換を行うことができた。 さらに、別経費によるものであるが、スイス法についてはルツェルン大学法学部で物権法および区分所有法制を研究されるJorg Schmid教授を訪問し、スイス法の概要や区分所有建物の現状等について質疑応答を行った。本訪問に先立ち、本補助金により購入した文献等で事前調査を行っていたため、有意義な意見交換ができたと考えている。この内容については近日中に紀要等において公表したいと考えている。スイスの階層所有権法については制度概要を紹介する比較的古い先行研究があるものの、最近の法状況に関する情報は殆どないため、今後の研究のための有用な資料となり得よう。また、スイス法については2009年に改正法が成立しており、そこでは区分所有関係が成立して50年以上が経過した場合における共同関係の解消に関する規定が新たに設けられており、これについてさらに調査を進めたいと考えている。
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