本年度は、とくに重要と思われるテーマについて広く資料を収集し、分析を進めることに努めた。 (1) 個別のテーマとしては、2008年にフランスにおいて国内法化された、2005年不公正取引方法指令の分析にとくに焦点を当てた。同指令は、消費者法関連の指令において完全平準化を正式に採用した最初の指令であり、これにより、各国に委ねられた裁量の余地は従前と比べて狭められることになった。同指令がEU消費者法の展開における転換点になるとの認識から、同指令の有する意義と問題点をとりわけフランス法との関係において確認する作業を行った。実体規定については、ほぼ検討を終えることができたので、続けて、法の実効性確保の研究に取り組んでいる。次年度も引き続き作業を継続する予定である。 広告規制に関しては、フランスにおける法改正の概要を扱う論考(「フランスにおける広告規制法の新たな展開-2005年不公正取引方法指令の国内法化にともなう消費法典の改正」)およびフランスにおける広告規制全般について論ずる論考(「フランスにおける広告規制」)を公表した。また、同じテーマについて日仏法学会総会における報告(2010年2月20日・於・東京大学法文4号館)を行う機会を得た。そこでの意見交換を通じて、広告規制の分析視角、民法典と消費法典の関係等について重要な示唆を得ることができた。 (2) 他方、国際動産売買条約、消費動産売買指令、フランス債務法/契約法改正に関する研究も進めている。それらに関する成果は、来年度以降、公表される予定である。
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