本年度は、ヨーロッパおよびフランスにおける消費者法の動向に関する研究を中心に行った。具体的には、広告勧誘規制(誤認惹起広告、比較広告、不公正取引方法、不招請勧誘)、法実効性確保措置(消費者団体訴訟、自主規制、共同規制)、完全平準化について検討した。これらの各テーマについては、本年度中に報告する機会を得た複数の研究会(近弁連、早稲田大学、名古屋大学)において有意義な議論、意見交換を行うことができ、その一部は本年度内に成果として公表することができた。また、2011年3月中旬から下旬にかけて、パリ第2大学債務法研究所(フランス)において債務法改正および消費者法の現況に関するインタビューおよび資料収集を行い、最新の知見を得ることができた。 以上の研究を通じて明らかになったことは、ヨーロッパ・レベルでの法の平準化ないし統一化へ向けた試み(ヨーロッパ契約法、選択的ルール、共通参照枠、消費者法における完全平準化アプローチの採用)は、徐々にかつ確実に前進しつつあるものの、他方で、様々なレベルで厳しい抵抗ないし障害に直面しているということである。そして、このような状況は、特定の加盟国に限られるものではなく、むしろ国を越えて共有されつつあることは強調されてしかるべきであろう(もっとも、国による状況の違いには十分に配慮する必要がある)。 以上の動きはなお流動的であり、現時点でフランス法への影響を断定することは時期尚早と言わざるを得ない。次年度も、引き続き状況を正確に把握すべく研究を進める必要がある。
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